敏腕社長に拾われました。

「すみません」

一言謝って、顔に照れ笑いを浮かべる。

いい年して恥ずかしい……。

でも高城常務は「今日は実に愉快だ」ととても機嫌がよくて、ホッと胸を撫で下ろした。

「来月うちで開催する創業記念パーティーには、ぜひ君にも参加してほしいね」

「創業記念パーティーに、私がですか?」

まだ新人の私なんかがそんなところに顔を出してもいいものなの?と、虎之助の顔を窺う。

「う~ん、そうですね。高城常務のお誘いですし、前向きに検討しておきます」

前向きに検討……。そうだよね。虎之助と同行するなら、私なんかが行くよりも、宮口さんが行ったほうが様になる。なんて自分で言っておいて、それはそれでちょっと癪だけど。

でも会社の創業記念パーティーといえば、大きなホテルの大広間なんかを使って盛大に行われるに決まってる。そんなところに行ったことがない私は、どんなふうに振る舞えばいいのかも分からない。そんな場所にホイホイと顔を出した日には、失敗して恥をかくのが関の山。

今日ここにいるのだって、身の程知らずって感じなのに。

気落ちしながら、先ほど仲居さんが運んできてくれた水菓子を口に運ぶ。

やっぱり美味しい。

食べ物でテンションが上がる私って……。

そんな自分に苦笑しながらもう一口食べると、虎之助と高城常務の話に耳を傾けた。



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