敏腕社長に拾われました。

「でも虎之助も一応、社長なんだし」

「なんだよ、その一応って。俺はれっきとした社長なの。なに、社長が運転しちゃいけないって決まりでもあるの?」

「そんなのないけど……」

お抱え運転手でお出迎えって方が箔が付くというか重みがあるというか、偉い人感が出ると思うのに。

虎之助って変わってる。まだ若いから? 若い……若い?

「あぁ!!」

「な、なんだよっ!?」

私の突然の叫び声に、前を歩いていた虎之助が振り返る。

「ねえ、虎之助っていくつなの?」

「いくつって、今頃かよ。じゃあ逆に、俺っていくつに見える?」

出た! 合コンでブリッ子女が『私って、何歳に見えますかぁ~』とか聞いちゃって、若く言われるのを期待するテッパンスチュエーション。

それを、男の虎之助が言っちゃう? この場合、私は何歳っていうのが正解なの?

宮口さんが三十歳。彼女のことを“朱音さん”と呼んでいたから、彼女よりは年下? 長坂胡桃のことは“胡桃ちゃん“。だったら二十二~三十歳の間ってこと? 永田さんって、いくつだったっけ?

頭の中は、どんどん数字で埋め尽くされていく。

あぁ~、もう面倒くさい。もう何歳でもいいいか。

「三十歳?」

適当にこたえると、虎之助が「おっ」と小さく反応を見せた。



< 77 / 248 >

この作品をシェア

pagetop