敏腕社長に拾われました。

もしかして正解なの? 期待の目で虎之助を見る。

「ブッブー。残念、不正解。俺の年齢は、二十九歳でした」

「なんだ、一歳しか違わないじゃない。プラスマイナス一歳はOKでしょう?」

なんだ、その理屈は……。と自分でも思わなくもないけれど、なんとなく悔しくて最後まで負け惜しみ。

「まあ二ヶ月後には三十だから、あながち間違いじゃないけどね」

駐車場に着くと、虎之助はそう言って助手席のドアを開ける。

「二ヶ月後って、虎之助八月が誕生日?」

「そう、八月四日。現職アメリカ合衆国大統領と同じ誕生日」

虎之助は自慢気に言うと、ニカッと笑ってみせた。

その笑顔に、私の心臓がトクンと音を立てる。

な、なに今の? 

慌てて胸に手を押し当ててみたけれど、今はもうなんの変化もない。

「智乃? どうかした? さあ乗って、帰るよ」

「あ、うん……」

虎之助に背中を押され、助手席に乗り込む。

昨日からいろいろありすぎて疲れてるから、心臓もビックリしちゃってるのかな。今日はちょっと早く寝よう。

さっきの胸の痛みをそう結論づけると、助手席のシートに身を沈めシートベルトを締めた。



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