敏腕社長に拾われました。
「アパートは……」
そして虎之助はそこで言葉をいったん止めると、信号で車を停め大きく肩で息をついた。
「智乃ひとりで行かせるわけにはいかないな。まだ後日、俺も一緒に行く」
はあ!? なんで? どうして虎之助が一緒に行かないといけないの?
あ、それって保護者的な感じ。我が子をひとりで、元カレのところになんて行かせられません!って感じのやつ?
でも私は当たり前だけど、虎之助の子供じゃない。それにそもそも、もう二十五だよ? そんなに心配することないんだけどなぁ。
信号が青になり、車が動き出す。虎之助は前を見据えたまま、ハッキリは分からないけれどまだちょっと怒ったような顔をしてる?
「虎之助?」
シートから身を起こし、体を少しだけ虎之助に近づけた。
「なに?」
「何か怒ってる?」
怒らせたつもりは全くないけれど、虎之助のぶっきらぼうな態度が気になって一応聞いてみる。
「ああ。智乃の危機感のなさと、無神経さにね」
それだけ言うと虎之助は、アクセルを目一杯踏み込んだ。
「うわっ!! ちょっと虎之助、スピード出し過ぎじゃ……」
「黙ってろ」
「は、はい……」
私って無神経? 危機感ないってどういうこと? 私のなにが、虎之助の怒りに触れたのか。考えれば考えるほど、分からなくなってくる。
でも虎之助の態度を見た限り、ここは黙っておいたほうがよさそうだ。