敏腕社長に拾われました。

虎之助のちんぷんかんぷんな言い草に、イライラは募るばかり。 

「もう、すぐコーヒー淹れるから早く部屋から出てってよ!」

「あれ、誰に向ってそんな偉そうなこと言ってるのかな? 智乃、ここのご主人様は誰だっけ?」

「……と、虎之助」

「だよね。だったらこれからは、いちいち口答えしないこと。俺を怒らすと、何するかわかんないよ?」

虎之助は言いたいことは全部言ったのか、満足そうな顔をするとリビングへ戻っていった。

何が『何するかわかんないよ』よ! わかって言ってんでしょ!

なんとも言えない怒りが込み上げて来て、体がわなわなと震える。

でも、智乃いい? ここは我慢よ、我慢。今は居候の身、追い出されたりしたら困るのは自分なんだからね。ほ~ら、ゆっくり深呼吸して~、スーハースーハー。

それにしても今日の虎之助、私がアパートに荷物をとりに行くって言ってからちょっとおかしくない? なんであんなに機嫌悪くなるわけ?

偉そうなのはいつものことだけど、なんかとっても引っかかる。

それでも“触らぬ神に祟りなし”なんて言うし、今日はこれ以上虎之助の機嫌が悪くならないようにしなくっちゃ。まずは、美味しいコーヒーでも淹れてあげますか。

ベッドから下りると手に持っていたブラジャーをしまい、私もリビングへと急いだ。



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