敏腕社長に拾われました。
でも無視はいけないと、少しだけ微笑みを返すと……。
「あれあれ? こんなところに大きなゴミが落ちてるね」
「は?」
この人、今なんて言った? ゴミが落ちてる? どこに?
自分が立っている周りを見渡してみても、ゴミらしいゴミはどこにも落ちていない。
一体この人は、何を言ってるんだろう。
小首を傾げもう一度目の前に立つ男の人を見てみると、彼はにっこり微笑んで私のことを指さした。
「キミのことだけど?」
キ・ミ・ノ・コ・ト・ダ・ケ・ド?
卵の? 違―う!!
こんな時にまで笑いに変えようとする、自分の性格が恨めしい。
でもそうでもしないと、この状況を乗り切るのは難しそうだ。
コイツ、何者?
人のことをゴミ呼ばわりするなんて、ちょっと頭おかしいんじゃないの?
イケメンで素敵な人なんて思ってしまった、自分自身が情けないよ。
私は何も見ていない。誰とも会ってない。今起こったことはなかったことにして、この場を離れよう。
中腰だった姿勢を正し立ち上がると、ボストンバッグを抱えて歩き出す。