敏腕社長に拾われました。

そのあと何度も「離して」って言ったのに、虎之助は離してくれないどころか少し緩めた腕で器用に私の体を反転させると、向かい合わせてしまう。

間近で見る虎之助の寝起きの顔は普段より幾分幼く見えて、そのギャップになぜだか鼓動が速くなる。

どうした智乃? 何ドキドキしちゃってるのよ!

誰かが私の耳元で囁くけれど、そんなこと聞かれても自分でもよくわからないからどうしようもない。

あ、きっとあれだ、自然現象ってやつ? 誰だってイケメンをこんな間近で見たら、ドキドキだってするってもんでしょ。虎之助も無駄にいい男だし、私の脳がちょっと勘違い起こしているだけに決まってる。

だからこれは恋のドキドキじゃないと決めつけると、虎之助から離れようと試みて、ふとあることに気づく。

「虎之助、上半身裸……とか」

「そうだけど。俺、寝る時は何も着ない主義」

へぇ~そうなんだ……って、のんきなこと考えてる場合じゃないでしょ!

彼氏でもない男性に上半身裸で抱きしめられていたなんて、親が知ったら泣くよ。というかどんな理由があろうと、彼氏でもない男性と一緒に暮らしてる時点で即アウトだよね。

恥ずかしいやら情けないやらで、トホホな気分になってしまう。

でもちょっと待って。虎之助、寝る時は何も着ない主義って言ったよね? 何も着ない主義? それってもしかして……。

全裸ってことっ!?



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