敏腕社長に拾われました。

ホントに? ま、まさかねぇ。いくらなんでも人のベッドにすっぽんぽんで入ってくるなんてこと、あり得ないよね?

でも本当のところを知りたいような、知りたくないような。

じゃあ確かめてみる? でもどうやって? そりゃ確かめる方法なんて、ひとつしかないんじゃない?

好奇心半分、罪悪感半分。

自然に動き出した私の左腕は、布団の中を虎之助の下半身に向ってゆっくり進んでいく。

もしもホントに虎之助がすっぽんぽんだったらどうしよう!?と羞恥心に目を瞑ると、「フッ」という笑い声と共に左腕が捕らわれてしまった。

「智乃、俺が全裸か気になるんだ? だったらこんなまどろっこしいことしてないで、直接見てみる?」

虎之助は捕えていた私の左腕を離すと、ふたりの上に掛かっていた布団を大きく捲り上げた。

「いやぁーーーっ!!」

無理! 直接見るなんて、絶対に無理!!

突然掛布団を捲られて気が動転した私は、大声を上げると虎之助の体を力いっぱい押し倒す。

ドンッという音とともに聞こえてきた「イッタ……」っという声で我に返ると、ベッドから起き上がり声をした方を覗きこんだ。そこには頭を抱えてうずくまっている虎之助の姿があって。

「虎之助!」

慌ててベッドから飛び降りると、虎之助に近づいた。

「虎之助、大丈夫? 頭が痛いの? ねえ、虎之助!」

私の呼びかけに、虎之助はピクリとも反応しない。

どうしよう、大変なことしちゃった。このまま虎之助の意識が戻らなかったら……。

「虎之助! ねえ、返事してよ! 虎之助っ!!」

目から涙がこぼれ落ちると、小さくうずくまる虎之助の体を抱きしめた。



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