敏腕社長に拾われました。
「ねえ虎之助。もう、あんなことするのはやめて」
「あんなことって、ベッドに潜り込んだこと? それとも……」
「どっちもです」
「ちゃんとわかってるって。これからは気をつけるよ、たぶん」
『たぶん』なんてつけるところは、虎之助らしいけれど。ちょっと気を許したら、すぐこれだから困ってしまう。
でも虎之助は虎之助なりに反省しているのか、その声はいつもより切れがない。
そんな虎之助が面白くてクスッと笑ってしまうと、運転席から伸びてきた右手にコツンと頭を小突かれた。
「何笑ってるんだよ」
「うん? だって虎之助が……」
面白くて……そう言おうとして、その口を止める。
なぜならそれは、運転する虎之助の右頬が赤く腫れていたからで。
これって私が引っ叩いたからだよね?
虎之助の右頬にゆっくり右手を伸ばすと、指先でそっと触れる。その瞬間虎之助の体がビクッと跳ね、今自分のしていることに気づくと慌てて虎之助の頬から指を離した。
「ごめん……なさい」
「別にいいよ、謝らなくても。女に引っ叩かれることなんてしょっちゅうだし」
「しょっちゅう、なんだ」
なぜか虎之助の言葉に、胸がズキンと痛む。