敏腕社長に拾われました。

でもそうだよね。よく考えてみたら、虎之助ももうすぐ三十歳の大人の男。この歳まで彼女がひとりもいなかったってことはないだろうし、虎之助に好意を持って近づいてくる女性も多いはず。

いい歳して自分勝手だし俺様だし軽いし、いい加減なところも多々あるけれど、基本優しいしやる時はやるってところが女心をくすぐる感じ?

なんて、これは一般的なはなしで。私は女心なんてこれっぽっちもをくすぐられてないけれど。

でもなんだろう、この心の中がスッキリしない複雑な気持ちは……。

虎之助の横顔を見ても、その答えが出ることはなくて。

「虎之助って、彼女はいるの?」

なんて、それを今聞く?と突っ込みどころ満載なことを口走っていた。

「ねえ、それって本気で聞いてる?」

真っ直ぐ前を向いたままの虎之助が、低い声でぼそっと呟く。

あれ? 私また、虎之助の機嫌を損ねるようなこと言った? 『彼女はいるの?』って、そんなプライバシーに関すること聞いちゃダメだった?

でも今は同居人だし、そこのところはちゃんと聞いておく必要があるでしょ?

私の中の好奇心が虎之助の答えを待っていて、「うん、本気」なんて返事をしてしまったから大変。



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