敏腕社長に拾われました。
「智乃が俺のことどう思ってるのか知らないけど、見た目ほど女遊びはしてない。もし現在進行形の彼女がいたら、智乃と暮らさないしベッドにも潜り込まない」
「ちょ、ちょっと待って。彼女がいなくても、普通ベッドには潜り込まないでしょ?」
「そう?」
そうって、そりゃそうでしょ。
だって私は虎之助の彼女じゃないし、まだ知り合って数日しか経ってない。お金が貯まればお別れの、期間限定の同居人。
「とにかく私は今もこの先も虎之助の彼女になることはないんだから、勝手に部屋に入ってこないで!」
「でもあのマンション俺のだし、どの部屋に入ろうと俺の勝手だし。そもそもさ、智乃が俺の彼女にならないって誰が決めたの?」
「それは……」
「先のことなんて、誰にもわからないでしょ? 特に男と女なんて、どこでどうなるかわかんないもんだよ。一つ屋根の下で暮らしてたら、なおさらね」
虎之助はそう言うと、ちらっと私を見た。
どうしてそんな、魅惑的な目で私を見るの?
虎之助の目に心を奪われそうになって、それを寸前で引き戻す。
“未来の事を言うと鬼が笑う”なんて言うけれど、この先私と虎之助が恋に落ちることは万が一もない……。
虎之助が言った言葉を頭から消すと、ただまっすぐ前を見据えた。