3つの視線、1つの物語
シュンとする姫様に言葉を続ける
「もっと頼ってください。姫様が怪我したら俺が悲しくなります。王様だって悲しみます。…だから、頼ってください。姫様が呼べば、俺は姫様の元に駆けつけますから」
一人で頑張ろうとしないで欲しい
悪い結果になる前に、助けを求めて欲しい
「うん…わかった。ありがとう、ノア」
俺の言葉に姫様が頷いてくれた
しかも…俺に笑ってくれた
今まで一度も笑顔なんて見せてくれなかったのに
うん、ヤバい…
嬉しいし、可愛い…
「じゃぁ…ノア」
警戒の色を解いた姫様の声に呼ばれる
「なんですか?」
まっすぐ俺を見て言う姫様の瞳にも恐怖、警戒の色が消えていた
「私が落ちた木に実ってた桃…あれが食べたいの。明日、朝、お部屋に持ってきてくれる?」
あー…あれ桃の木だったのか
桃が食べたいの?
でも、だったら…
「あの桃がいいんですか?姫様が言えばもっと立派な桃だって手配してもらえると…」
「あの桃がいいの!」
どーしてもあの木の桃が良いのか…
まぁ、自力で取りに行かれるよりは良い
それに、どーやら俺を頼ってくれるみたいだし
「…わかりました。持っていきます」