Royal dots
プロローグ


「蓮見ましろチャン可愛い〜〜」


夕方の電車内に軽薄そうな中学生女子達の声が響きわたる。
ファッション雑誌をめくっては可愛い、可愛いと黄色い声を出して他人の迷惑なんかおかまいなしだ。


「こんなに小ちゃくて可愛いなんてズルい!」
「分かる!お姫様みたい!」
「めっちゃ守ってあげたいよね!」

うるせえお前らに何が分かるんだ。
イライラして中学生達を睨みつける。
すると1人が私の視線に気付き、友達にこそっと耳打ちした。


「ねえあそこの金髪ギャルこっち睨んでるよ」
「えっマジ怖ッ」
「カルシウム足りてないんじゃない?
チビだし」

その言葉に三人ともププッと吹き出す。
誰がチビだゴラァ!!と言ってやりたいけど、そんなことしたら撮影に遅刻してしまう。ここは我慢だ。

「化粧濃くね?」
「カラコンも入れてんじゃん。やりすぎ〜〜」

私が何も言わないと悟るやいなや、中学生達は調子に乗ってわざと私に聞こえるように悪口を言いだした。

耐えろ、耐えるんだ私。

ピキピキと額から音がするけど、撮影の二文字が私を抑えつける。


「まじチキンじゃね?つまんないんだけど」
「睨むだけなら大人しくしてろよ」
「ましろチャン見習えっての」


…蓮見ましろは私ですけど?


まさか誰も思わないだろう。
黒髪清楚系モデル「蓮見ましろ」の正体が、金髪カラコンギャルの猿子 幸(さるこ さち)だなんて。


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