Royal dots
蓮見ましろ
カメラのシャッターが断続的に切られる。
モデルのベストショットを逃すまいとカメラマンの表情は真剣そのものだ。
それに応えるように私も要求に合わせてポーズや表情を変える。
「ああイイねましろちゃん、もっと笑って…そうそう」
撮影はぶっちゃけ楽しくない。
カメラマンやスタッフにちやほやされるけど褒められてるのは私じゃなくて清楚系モデルの「蓮見ましろ」だ。
「蓮見ましろ」の間は黒髪に戻して、メイクも最小限。正直黒髪なんてダサいし芋くさいしナチュラルメイクも好きじゃない。
私からすれば金髪カラコンでギャルやってる方がよっぽど自然だ。
黒髪嫌い。撮影嫌い。
そんな私が何でモデルなんかやってるかというと…
「アンタはあと一歩足りないのよ!」
今、私は社長室に呼び出されている。
急にキンキン声で怒鳴るもんだから耳の奥が痛い。
「演技駄目、トーク駄目、顔だけ良いモデルならその辺に溢れかえってるわよ!分かる?!」
「はあ」
「歌はそれなりだけど、歌手レベルじゃない!」
社長ーー佐伯 環(さえき たまき)はこんな喋り方してるけど男だ。
つまりソッチ系の人ってこと。
筋肉隆々でケツアゴのくせに妙に白スーツが似合ってる。