ギャンブルワールド
レース会場に向かうとちょうど選手が走っていた。



レース序盤は冷静に観ていたおっさん達もレースが終盤になると熱くなる。



「行けっー!抜かされんなよ!」

「阿呆かぁ!何しとんならぁ!」


選手の順位が変わると金額が大きく変わる。

特に三連単だと三連複とは違い、順位が変わるだけでハズレ券、つまり車券が紙屑に変わる。

それだけに観客は熱くなり、罵声を選手に浴びせたり、時には祝福を送るのである。




「おじさん達ちょっと怖いね…。」

澪は熱くなり過ぎて選手に罵声を浴びさせたおじさんにドン引きだ。


「ギャンブルにはああいう訳の分からない客は普通にいるからな。気を付けろよ。」


嵐は涼しい顔で言う。

ああいう光景はギャンブルならよくある事で、特に驚く事ではない。



「それよりレース結果が出るぞ。」

嵐がそう言った後だった。場内アナウンスでレース結果が発表される。


「ただいまのレースの結果を申し上げます。1着6番・2着2番・3着1番。以上の結果になっております。」



アナウンスを聞いた後、嵐は手元にある車券を見る。

(俺が持っているのは三連複で1着1番・2着2番・3着6番か)


嵐は三連複でこの予想を10枚勝っていた。

三連複なら着順ぴったり同じじゃなくても1番と2番と6番が予想内に有れば当たりだ。


配当は1枚で3500円。つまり10枚合計で35000円の回収だ。


そして澪はと言うと…。

「やったぁ!三連単で予想が当たったぁ!」


何ぃ!?嵐は衝撃を受けた。

この予想を三連単で的中したら1枚65000円。


しかも澪は10枚この予想を買っている。

つまり澪は65万もの大金を一回のレースで得たのだ。


「や、やるな。じゃあこれを換金しないとな…。」


今まで澪に博打の才が無いと内心見下していた澪が大金をいきなり当てたので、嵐はショックを受けた。




喜ぶ澪を連れて換金して嵐が言う。

「金を換金するときは気を付けろよ。危ない人に襲われる可能性があるからな。」

これは嵐の実体験である。

昔、競馬で大勝ちした時の帰りに若いグループに後を付けられていちゃもん付けられたことがある。

この世界はギャンブルで全てを決めるとはいえ、法を犯す奴など、どの世界にもいる。






「へへん!この時点で嵐さんより大金あるし、この金を今日の夕方までにもっと増やすよ。」


意気込む澪であるが少し嵐は嫌な予感をする。


(まさか、調子に乗って奇跡の大敗とかしないよな?)
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