ギャンブルワールド
嵐が台の挙動などを調べている間に時間は過ぎ去っていった。


10時45分。

閉店の時間である。


嵐は店長に言われて店の外で待つことにした。

そして時を同じくして軍団達が店から出てきた。



「うっひょ〜!今日も10万の勝ちだぁ。」


「凄いッスね、リーダー。俺、今日設定判別ばっかで5万負けっすよぉ。」


頭の悪そうな会話である。


どうやらリーダーと言われる人間が子分に設定判別させているみたいだ。


設定判別なんてすると投資がかさむ。

設定が分かる頃には大抵かなり負けているからな。


どうやら、この軍団はリーダー以外まともなギャンブラーがいない。


リーダーは子分を使って甘い汁を吸い、子分は自分がリーダーに上手く利用されているのに気付いていない。



いわゆるワンマンチームで、組織と言うには余りに脆すぎる。



つまり、この勝負はリーダーがコケたら俺の勝利だな。


その時、軍団のリーダーが嵐に話し掛けてきた。

「よう。おめぇが店から雇われた勝負師かぁ?」

いかにもチンピラと言わんばかりのしゃべり方である。

「そうだが?」


「わりぃけどさ。俺達、軍団10人で打つから1人のお前には絶対勝てないぜぇ?」



「いや、むしろお前が絶対に勝てねぇよ。」


半笑いで嵐は言い放つ。


軍団は見落としている事があるのだ。

それに気付けば嵐が有利だと分かるはずなのに。


しかし、軍団は全く気付いていない様子である。

「馬鹿か、オメェ。俺達が開始からジャンジャン出せばお前に勝ち目は無いだろがよ。」



『開始からジャンジャン出せば』か。ギャンブラー特有の恥ずかしい台詞だ。


勝つことばかりしか目に見えていないポジティブなバカだ。

プロのギャンブラー、勝負師なら負けたときの事も頭に入れるべきなんだがな。




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