冷徹なカレは溺甘オオカミ
どきん、どきん。
緊張から嫌に騒ぐ胸をおさえながら、わたしはそっと右手を伸ばす。
目の前にあるのは、自分が住むマンションの、見慣れた郵便受け。
緩慢な動作で開錠した銀色の箱に“ソレ”が入っているのを見つけて、ギクリと身体を硬直させた。
「……また……」
思わず、吐息のようなつぶやきがもれた。
おそるおそる、中のモノを持ち上げる。
素っ気ない鉄製の郵便受けに入っているには、到底ふさわしくないソレ──一輪の真っ赤なバラを手に、わたしは深く、ため息を吐いた。