自白……供述調書
 都内のビデオボックスで聞き込みをしていた時、従業員の一人が、

「こっちの写真の方にそっくりな客なら覚えてます」

 と言ったのだ。

 従業員の話しによると、週に二、三回は来るという。

 このビデオボックス店は、都内を中心に近年一気に店舗数を増やして来たチェーン店で、夜の9時以降なら三千円で12時間過ごせる。中は、大体マンガ喫茶の個室より少し広い位で、主にアダルトDVDを貸し出ししている。

 最近の長引く不況で、こういったビデオボックスやネットカフェ等を住まい代わりに利用する者が増えて来ている。

 従業員の話しから、本間は注意深く慎重に事を進めた。とにかく、自分の目で間中なのかどうかを確かめなければならない。

 本庁の応援に行っていた佐藤刑事が、本間のこの行動を知り、自ら協力すると言って来た。

「当分、家に帰らずビデオボックスに泊まり込んでやるよ」

 以来、二人は交代でこのビデオボックスに通った。

 間中邦弘と思われる男を見たのは、年が明けて間もなくの頃だった。

 朝になり、その男が店を出る時間になった。

 本間は仕事に行かなければならないから、丁度夜勤明けで非番の佐藤刑事に連絡をした。

 尾行して貰う為だ。

 この男が間中邦弘であるかどうかを確認しなければならない。

 写真とそっくりだからと言って、本人に

「間中邦弘さんですか?」

 と尋ねる訳には行かない。

 否定されたらそこで終いだ。

 本人が何らかの形で身分証明書を提出したり、或は間中邦弘であると広言している現場を押さえられれば特定出来る。

 尾行した佐藤刑事は、はっきりと間中邦弘であると確認出来た。

 携帯電話の料金を払いに入ったショップで、その男が間違い無く間中邦弘である事を確認出来たのである。

 次からは、間中を四六時中監視して行けばいい。しかし、それは現状ではかなり難しい問題でもあった。





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