自白……供述調書
「カイシャ(警察署の隠語)の近くじゃ人の目もあるが、此処なら大丈夫だろ」

「すいません、時間取らしてしまって」

「それより、話しってのは?余っ程の事か?」

「はい……」

 佐藤が本間の様子を察し、もう一度辺りを確かめた。

 大丈夫と目で促す。

「公安が動いてるみたいなんです……」

 本間は、最近自分が何者かに監視されている事をかい摘まんで話した。

「何かの気のせいとちゃうのか?」

「サトちゃん、そうとも限らないよ。考えられなくもない」

「自分も、初めは気のせいだと思ってたんすが、ここ最近は監視の仕方があからさまな感じなんです」

「具体的には?」

「尾行が着くようになったのと、昨日なんかケータイをほんのちょっとの間だけ机に置きっ放しにしてたら、誰かに触られた形跡があったんす。この一週間ばかり、書類やケータイには、万が一を考えて誰かが触れたら判るように細工してたんすが、かなりやられてます」

「公安が動いたって事は、例の事しか考えられんが……」

「でもチョーさん、ちょっと変ですよね?」

「ん?」

「だって、捜査費用ごまかしてるとか、Bの連中(暴力団)とつるんでるって訳じゃないし、わざわざ公安が動くような事とは思えないな。
 監視をされてるのは本間の言う通りでしょうが、ひょっとしたら別な線って事ないですかね?」

「俺もそれを考えていたが、となるとだよ、上が直に調べてるって事になるか……」

「直接の上って事は……青瓢箪?」

 暫く三人は押し黙った。

 公安を使わず直接、上司が部下の行動を監視してるとなると、これまた話しがややこしくなって来る。

 目的が何処にあるかがはっきりと掴めない事には、対処のしようが無い。

「本間チャン、今迄調べた書類や資料はどうしてる?」

「監視されてるなって思い始めてからは、予備のメモリースティックに入れて、こうして……?」

「どうした?」

「……無い。間違い無く背広の内ポケットに入れた筈なのに……」

 三人の表情が一段と険しくなった。




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