自白……供述調書
 無言のままでいる私を、刑事達は図星を付けられた犯人の否認と受け止めた。当然、取り調べの様相は厳しさを増した。

 どれ位の時間が経ったであろうか。午前中からずっとだから、多分昼は過ぎていた筈だ。

 本来なら、現行の代用監獄法に則って、昼の食事時は一旦取り調べを休止し、留置室に被疑者を戻して昼食を兼ねた休憩を取らせなければならない。

 長時間連続した取り調べで、被疑者に必要以上の肉体的、精神的苦痛を与えてはならない……

 と、建前ではなっている。

 緊張感で空腹はまだ感じていなかったが、刑事達から受ける圧迫感は、初めて体験するものだった。

「どう考えても理屈に合わねえだろう……。それ迄は二、三日置きにヤマを踏んでいたお前がだな、十日も二週間も次のヤマ迄間が開くってのはおかしいじゃねえか。一発ヒトヤマ当てたって訳でもない訳だし。
 自分にはアリバイがありますって言ってたが、それを証明してくれる証言が得られなきゃ、それはアリバイとは言わねえんだぜ」

「ですから……」

「ですからもクソもねえんだ!いいか、そこ迄しらばっくれんなら、もう一つ言ってやるぞ。ガイシャの家への侵入手口が、お前のそれとまるっきりドンピシャなんだよ。在り来りな手口じゃねえよな。ノビの手口ってえのは、似たようなもんでも、ポイント、ポイントで個人差がはっきり出るもんなんだ。それに、確かこの辺に土地勘があったよな」

 土地勘……

 確かに以前、営業の仕事で光が丘の隣街である成増には何度も足を運んだ事はあった。

 成増は板橋だ。練馬では無い。

「それは、昔仕事で……」

「おいおい、木山さんよ。てめえの脳味噌は都合が悪くなると踏んだヤマを忘れちまうのか。三度目に務めに行った時に、光が丘の近所でヤマを踏んでんだろうが!」

「近所って、全然光が丘からは離れてますよ」

「バカヤロー!成増といやあ光が丘から歩いたって10分、15分の距離なんだぜ!」

 十年前、私は埼玉と東京の境に位置する成増のスナックで強盗をした。

 別件で逮捕されていた私は、この事件を自ら自供し、五年の実刑判決を受けて服役した経緯があった。


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