自白……供述調書
「木山の何を知りたいんだろう……」

「野間口さんには想像つきませんか?」

「そうねえ……。これが木山を取調べた刑事とかだったらある程度は想像がつくんだけど……。
 逆に、その刑事がどういう理由で木山の件で会いに来たのかを聞いちゃえば?」

「刑事が僕達に本当の事話しますかね?」

「それは聞き方にもよると思うけど。でも変よねえ……」

「杉並署の刑事じゃなくて、練馬署のって事でしょ?」

「そう……」

「最初に捜査本部が設置された時の捜査員だったそうですよ。それでじゃないですかね」

「でも、杉並で木山が逮捕され、捜査権限の全てがそっちに移った訳でしょ。実際に捜査本部では木山の事情聴取とかしてなかったと思うけど?」

「そうなんですよねえ。何だか考えれば考える程、判んなくなって……」

「その辺の事も含めて探りを入れてみたら?
 ひょっとしたら、そこから警察内部の新しい情報が判り、それが裁判に有利なポイントになってくれるかも知れないわよ」

「僕で上手く聞き出せるかな……」

「あら?いつの間にか半年前の森山君に戻ってる。木山の弁護を引き受けてからの自信満々な森山君は、休暇でも取ってるのかしら?」

「からかわないで下さい。この前の事を言ってるのでしたら……」

「冗談よ。ねえ」

「はい?」

「私が居たらまずい?」

「いえ、別に……」

 話しをしているうちに、森山自身がその事を頼もうかとも思い始めていた。だが、心の何処かに、この裁判は自分一人の手で、という意識がまだある。こうやって、結局は自分一人の力で解決出来ない事にもどかしさを感じてもいる。

 森山の思いを察したのか、

「自分一人で背負い込むより、面倒なものは誰かに背負って貰う事も大事よ」

 と野間口妙子が言った。

 その言葉は、それ迄見て来た彼女からは、意外に感じる言葉であった。





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