自白……供述調書
阿久根からの二度目の電話は、きっかり一時間経ってから掛かって来た。
既に、事務所があるビルの近く迄来ているという。
森山と野間口妙子は、やや緊張した面持ちで阿久根が来るのを待った。
微かに聞こえたエレベーターの到着音と靴音が、二人だけしか残っていないビル全体に長く余韻を残した。
扉がノックされ、どうぞと野間口妙子が言う。
ゆっくりと開けられた扉から見えた姿は、電話から想像していたよりも年配の男だった。
野間口妙子は、パーテーションで仕切られた応接室へ阿久根を案内した。
入れ代わるように森山が阿久根の正面に腰を下ろす。
「突然で申し訳ありません。お電話致しました練馬署の阿久根と申します」
「森山です」
簡単な挨拶を交わしているところへ野間口妙子が珈琲を持って来た。
森山の隣に座る。
「彼女も僕と同様に、木山悟の裁判に関わっておりますので、同席しますが構いませんね?」
「ええ。では、早速なんですが……」
「その前に、こちらから伺いたい事があります」
野間口妙子が阿久根を制し、
「現在の阿久根さんは、どういう立場で木山の件をお聞きになりに来たのですか?
阿久根さんは、事件が起きた当初の捜査員だとおっしゃっていたようですが、阿久根さんご自身は木山との面識は?取調べとかされたんでしょうか?」
まさに矢継ぎ早の質問だった。
彼女の独特な女性にしては低音な声が、こういう会話の席では重みを感じさせる。
自分の話しを遮られ、一気にまくし立てられた阿久根は、困惑しているかのような表情を浮かべていた。だが、困惑と読み取っていたのは、森山と野間口妙子だけで、阿久根は何から説明するべきか話しの組み立てに考えを巡らせていただけだった。
「お答え出来ないような事でしょうか?」
野間口妙子の低い声が、よりハスキーになって、阿久根が答えるのを急かした。
「いや、きちんと今からご説明致しましょう。ただ、一つだけお約束頂きたいんです」
そう切り出した阿久根の目は、覚悟を決めた者の色が宿っていた。
既に、事務所があるビルの近く迄来ているという。
森山と野間口妙子は、やや緊張した面持ちで阿久根が来るのを待った。
微かに聞こえたエレベーターの到着音と靴音が、二人だけしか残っていないビル全体に長く余韻を残した。
扉がノックされ、どうぞと野間口妙子が言う。
ゆっくりと開けられた扉から見えた姿は、電話から想像していたよりも年配の男だった。
野間口妙子は、パーテーションで仕切られた応接室へ阿久根を案内した。
入れ代わるように森山が阿久根の正面に腰を下ろす。
「突然で申し訳ありません。お電話致しました練馬署の阿久根と申します」
「森山です」
簡単な挨拶を交わしているところへ野間口妙子が珈琲を持って来た。
森山の隣に座る。
「彼女も僕と同様に、木山悟の裁判に関わっておりますので、同席しますが構いませんね?」
「ええ。では、早速なんですが……」
「その前に、こちらから伺いたい事があります」
野間口妙子が阿久根を制し、
「現在の阿久根さんは、どういう立場で木山の件をお聞きになりに来たのですか?
阿久根さんは、事件が起きた当初の捜査員だとおっしゃっていたようですが、阿久根さんご自身は木山との面識は?取調べとかされたんでしょうか?」
まさに矢継ぎ早の質問だった。
彼女の独特な女性にしては低音な声が、こういう会話の席では重みを感じさせる。
自分の話しを遮られ、一気にまくし立てられた阿久根は、困惑しているかのような表情を浮かべていた。だが、困惑と読み取っていたのは、森山と野間口妙子だけで、阿久根は何から説明するべきか話しの組み立てに考えを巡らせていただけだった。
「お答え出来ないような事でしょうか?」
野間口妙子の低い声が、よりハスキーになって、阿久根が答えるのを急かした。
「いや、きちんと今からご説明致しましょう。ただ、一つだけお約束頂きたいんです」
そう切り出した阿久根の目は、覚悟を決めた者の色が宿っていた。