自白……供述調書
「それは阿久根さん達が解決する事であって、僕達が考えるべき問題は木山悟の無実を証明する事じゃないか。それには、これが良いチャンスだよ」

「そうね……そうよね」

 とは言ったものの彼女の中では、納得仕切れないものがあった。

 その気持ちが一体何処から湧いて来ているものなのか、彼女自身が気付いていないだけに、余計もどかしく思ったのである。

「お話しの内容は全て了解致しました。早急に、木山のDNA鑑定を申請します。」

「宜しくお願いします。その際、現場遺留物の件はあくまでも弁護側独自の調査で判ったという事にして下さい」

「はい、その点は問題ありません。今夜の事は事務所の人間以外には一切話しませんから」

「最後にもう一点だけお願いしたいのですが」

「何でしょう?」

「結果が出て、それを新証拠として提出される時が来ましたら、その前にご連絡頂けますか?」

「構いませんよ」

「マークしている人物に、任意同行を求めるタイミングがありますので」

「判りました。結果が判り次第、阿久根さんにご連絡します」

 阿久根は、ケータイ番号とメールアドレスを教え、腰を上げた。

 エレベーターまで見送りに来た野間口妙子が、ぽつりと一言漏らした。

「万が一、木山のものと合致しちゃったら……」

「野間口さん、そうなったら安っぽいミステリー小説になってしまいます」

「そうですよね」

「現実の世界では、そうそうオカルトじみたミステリーな事件は起きないもんです」

 エレベーターに乗り込み、笑いながら阿久根はそう言った。

 外に出ると、すっかり夜も深まっていた。

 オカルトじみたミステリー……か

 野間口妙子に言った言葉が、何故か頭の中で何度も浮かんで来た。




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