自白……供述調書
机の上に置かれた被害者の惨たらしい写真。
指を指しながら話し続ける刑事。
ノートパソコンを打つ刑事。
それをじっと見つめている別な刑事。
そして……
朦朧としたまま時折頷く私……
「……最初、私は八月九日という日は光が丘には足を運んだ事がありませんと申しましたが、このように、数日来の空腹と徒労で、はっきりとした事を記憶しておりませんでしたから、自分が何月何日に何処に居たという確証はないのです……と、こういう訳だな?」
「……はい」
パソコンを打っている刑事が文章を読み上げながら同意を求めて来る。
機械的に返事を繰り返す私……
はい、という言葉しか発しなくなった私……
「……でだ、この被害者の住んでいたマンションは、前から目星をつけてたりとかしてたのか?」
「……はあ」
「ようは、十年前に成増で強盗事件を犯した時に、この周辺を下見した事があったので、土地勘があったという事でいいんだな?」
「……はあ」
「うん、次に侵入した経緯についてお話し致します、と。
木山、こうして最初から素直に話してりゃ俺達も声を荒げたりはしなかったんだぜ。ほれ、ちょっと煙草でも吸って一服してろ」
「は、腹が……」
「ん?何だ、どうした?」
「飯を……」
「ああ、飯か。もうちょっと待ってろ。被害者宅に侵入して、コロシに至った経緯迄を調書にしたら飯にしてやる。留置の官弁じゃなく、なんか旨いもん取ってやるから、もう少し辛抱してろ」
「……」
キーボードが澱み無く打たれて行く。
途中、別な刑事が捜査資料を持って来ては、それを元に更に文章が増えて行く。
「よし、木山、じゃあ侵入の件から話しを聞くぞ。そのマンションは何階建だったか覚えてるか?」
「四……五階、だったかな……」
「よおく思い出してくれよ。もう少し高くなかったか?」
「……」
「七階位はあったろ?」
「……」
「まあ、その辺は記憶が定かじゃなかったとして、被害者の部屋は何階だったか覚えてるよな?」
この時、私の頭の中で、見た事の無い映像が浮かんで来た。
指を指しながら話し続ける刑事。
ノートパソコンを打つ刑事。
それをじっと見つめている別な刑事。
そして……
朦朧としたまま時折頷く私……
「……最初、私は八月九日という日は光が丘には足を運んだ事がありませんと申しましたが、このように、数日来の空腹と徒労で、はっきりとした事を記憶しておりませんでしたから、自分が何月何日に何処に居たという確証はないのです……と、こういう訳だな?」
「……はい」
パソコンを打っている刑事が文章を読み上げながら同意を求めて来る。
機械的に返事を繰り返す私……
はい、という言葉しか発しなくなった私……
「……でだ、この被害者の住んでいたマンションは、前から目星をつけてたりとかしてたのか?」
「……はあ」
「ようは、十年前に成増で強盗事件を犯した時に、この周辺を下見した事があったので、土地勘があったという事でいいんだな?」
「……はあ」
「うん、次に侵入した経緯についてお話し致します、と。
木山、こうして最初から素直に話してりゃ俺達も声を荒げたりはしなかったんだぜ。ほれ、ちょっと煙草でも吸って一服してろ」
「は、腹が……」
「ん?何だ、どうした?」
「飯を……」
「ああ、飯か。もうちょっと待ってろ。被害者宅に侵入して、コロシに至った経緯迄を調書にしたら飯にしてやる。留置の官弁じゃなく、なんか旨いもん取ってやるから、もう少し辛抱してろ」
「……」
キーボードが澱み無く打たれて行く。
途中、別な刑事が捜査資料を持って来ては、それを元に更に文章が増えて行く。
「よし、木山、じゃあ侵入の件から話しを聞くぞ。そのマンションは何階建だったか覚えてるか?」
「四……五階、だったかな……」
「よおく思い出してくれよ。もう少し高くなかったか?」
「……」
「七階位はあったろ?」
「……」
「まあ、その辺は記憶が定かじゃなかったとして、被害者の部屋は何階だったか覚えてるよな?」
この時、私の頭の中で、見た事の無い映像が浮かんで来た。