自白……供述調書
 森山は翌日、木山のDNA鑑定を申請した。

 検査結果が出るのは公判日前日。

 その結果を持って一気に木山の無罪、警察側の自白強要を訴える腹積もりだ。

 これで勝ちは決まった……

 どうしてこの点に早くから気付かなかったんだ……

 最初から此処に目を着けてれば、もっと楽に戦えてたのに……

 しかし、致し方無い事であった。

 森山が見た捜査資料の殆どが、杉並署で作成された物だったわけで、木山を犯人とすべく作られた物だったのだ。

 都合の悪い証拠になりそうな捜査資料を杉並署は、使わなかった。

 それにしても、警察の内部がこうまで腐敗していたという事実の方が、驚きであった。

 木山はその犠牲者なのかも知れない。

 警察官僚と現場捜査官との確執は、弁護士という職業に就いてから幾度か目にはして来たが、これ程までとは思ってもいなかった。

 木山の裁判記録を初めて目にしてから、一貫して冤罪を信じていた森山にとって、これで無罪を証明出来るという意気込みが湧いていたが、一方で野間口妙子は何処か手放しで喜べない不安を抱いていた。

 その理由を彼女自身、上手くは説明出来ないのだが、何処か今一つしっくり来ないものを感じていたのである。

 ただ、これも検査結果がはっきりすれば消えてしまう、単なる思い過ごしであろうと自覚はしていた。

 しかし、木山の検査結果は、皮肉な事に野間口妙子の不安通りになってしまった。




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