自白……供述調書
「じゃあ私は、奴を搾り上げて来ますから」

「おう」

 若林が取調室に消えると、阿久根は再び資料の見直しに取り掛かった。

 今調べているのは、マンションの防犯カメラの録画である。

 パソコンの画面に一こまずつ映し出し、不審者の洗い直しをしていたのだが、何度見直しても、事件に結び付きそうな人物は、間中邦彦しか見当たらない。

 阿久根は一旦、間中を容疑者から外し、防犯ビデオに写っている不審者を別な人間という想定をしてみた。だが、そうなるとDNAが一致した毛髪はどうなる?

 それに、ビデオの不審者の画像を鮮明に解析すればする程、間中に酷似して行く。

 実際に、被害者との接点もある。

 一番良いのは、やはり間中本人を事情聴取する事なのだが、現状では難しい。

 いっその事、署には引っ張らず、一対一で……

 そんな事を考えているうちに、時間がどんどん過ぎて行った。

 そろそろ今夜は切り上げようかと思い始めた時、若林が阿久根を呼んだ。

「どうした?」

「アクさん、ちょっと面白い話しなんですが……」

 そう言って、阿久根の耳元に近付いた。

「パクったあのあんちゃんが……」

「……うぅむ」

「一応、話しが話しなんで、アクさんに知らせて置こうと……」

「ありがと、事が事だから、きっちり裏取った方がいいな……」

「今、中井にやらせてます。なんでしたら、アクさん自身で突っついてみますか?」

「いいかい?」

「ええ、もう青瓢箪も帰ってますし、夜勤で残ってる頭でっかちは、害の無い生安(生活安全課)の課長ですから、好きにやれますよ」

 二人は互いに頷き合い、取調室へ入って行った。






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