自白……供述調書
 その男は、不貞腐れた態度で両足を投げ出していた。

「……じゃあ何か、初めて道で会った人間から、この時計を質入れしてくれって頼まれたわけか?
 お前、それおかしくねえか?そんな与太話し信じる程、警察は甘くねえぞ」

「信じるも信じねえも、俺はホントの事喋ってんだよ!
 たく、いい加減にしてくれよ!」

 男が虚勢を張っているのは、誰の目にも判った。

 机を蹴飛ばし、不遜な態度をとり続ける。

「ちょっといいか?」

 若林が取調べに当たっていた刑事を下がらせた。

 阿久根に目配せをする。

 若林が男の正面に座り、阿久根がやや離れて横に座った。

「ロレックスの話しは、後でゆっくり聞く事にするから、もし何か思い出したら何時でも話してくれ」

 若林の声音は低いが、それでいて男に圧力を掛けるような凄みがあった。

「な、何だよ、思い出すも何も……」

「詳しく聞かせて欲しいのは、さっきの刑事に話してくれた事なんだ」

「さっきの話し?」

「お前、この偽造免許証使って、中野の携帯ショップで携帯電話を買うの頼まれて金を貰ったと話してたが、それは本当なんだな?」

「何だよ、正直に全部話しただろ。信じてねえのかよ!」

「いや信じるよ。ちゃんと共犯者の名前も話してくれてたしな。ただな、こういう事はきちんと確認しなきゃならないんだ。
 確か、ネットのサイトで頼まれたと言ったが、その時にお前の他に何人位集まったんだ?」

「だから、さっきも話したじゃねえか。詳しくは知らねえけど、俺がその仕事を頼まれた時は、他に二人居たよ」

「もう一度、名前を教えてくれないか?」

「一人は名前を言わなかった、もう一人は、俺と同じ買い物をする奴だったけど、名前の知らない男から、まなかって呼ばれてた……」

 その名前を聞くと、阿久根は間中邦彦の写真を取りに立ち上がった。


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