自白……供述調書
「阿久根係長、済まないがちょっと来てくれないか……」

 このところの調べ物でさすがに寝不足になっていた阿久根は、眠い目をわざと見開くようにして水元課長の前に立った。

「何かご用でしょうか……」

「うん。君に頼みがあるんだ」

「はい、何でしょう」

「暫く、赤坂署へ応援に行って貰えないか。知ってるだろうが、先月起きたデートクラブ嬢殺人事件なんだが、捜査員の増員が決まってね、うちの方にも割り当てが来たんだ。本庁からの指示で、なるべくベテラン捜査員を回すようにという事で、署長からも君の名前が上がったんだ」

「私が行くとなると一係は?」

「私が兼任で受け持つ。うちの管内は、ここんとこそう事件も無いし、君も手持ち無沙汰だろうから、宜しく頼むよ。既に赤坂へは連絡が行ってる。今日から早速行って欲しい」

「今日からですか?」

「ああ、周辺のローラー作戦で、聞き込みを強化するとの事だ。あっ、向こうの捜査が一段落する迄は、こっちに顔を出さなくていい。これが辞令だ」

 青瓢箪と言われている細長い顔を上げ、水元は辞令を差し出した。

 阿久根は、込み上げて来る怒りを何とか抑え、引ったくるようにして辞令を受け取った。

 一瞬、水元の口許が歪んだが、次に見せた表情は、蔑みに変わっていた。





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