自白……供述調書
 間中逮捕の知らせが阿久根の元へ届いたのは、赤坂署の合同捜査本部へ出向して三日目の事であった。

「青瓢箪の野郎、何処迄現場を舐めてんだ……」

 阿久根に知らせる為に電話を掛けて来た本間は、この出向命令を聞いて阿久根以上に怒りを爆発させた。

 そして、その怒りの矛先は間中邦彦に向けられたのである。

 逮捕の罪状である詐欺に関しての書類送検が済むと、本間は連日間中を光が丘の件で調べた。

DNA鑑定で、間中のものと思われる毛髪が物的証拠としてあるから、本件以外の取調べであっても、上からは何も言って来ない。

 広域詐欺グループの捜査本部が置かれていた新宿署で、連日連夜長時間の取調べが続いた。

 光が丘の件を突き付けると、間中はあっさりと被害者へのストーカー行為を認めた。

 最初に被害者である佐山芳子を知ったのは、本間の推測通り吉祥寺に住んで居た頃であった。

 自分の配達区域に引っ越して来て間もなかった被害者から、新聞の購読申し込みを受けたのがそもそものきっかけだった。

「一目見て、こんな女の子が彼女になってくれたらな、て、そう思って……」

 一目惚れをした。

 以来、新聞代の集金の時だけでなく、何かと理由を付けては、彼女のアパートに出向き、サービス品を渡していたという。

 佐山芳子が吉祥寺から引っ越しをすると、間中は引っ越し先をアパートの大家から聞き出そうとした。

 だが、大家も豊島区の方としか聞いていないと言って、詳しい住所は教えなかったらしい。仕方無く、間中は自分で捜し回った。

 偶然、佐山芳子宛ての郵便物を手に入れた間中は、被害者の家族になりすまし、郵便局から辿って彼女の住所を知った。

 新しい住まいを知った間中は、その地区を配達区域にしている新聞販売店に移ったのである。そして、偶然を装い再び彼女に近付いたのだ。

 ところが、間中の彼女への想いが余りにも異常な程になって来た為、恐怖を感じた被害者は引っ越して来て半年もしないうちに、新しい住まいに移ったのである。






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