自白……供述調書
「それで、今度は光が丘に越した事を調べた訳だが、どうやって知ったんだ?」

「前に、彼女が大手町迄通勤してるって聞いて、それで毎日大手町の駅で……」

「ずっと待ち伏せしてたのか?」

「朝と夕方は駅で、昼間は、近くのファミレスとか、コンビニを……」

「で、捜し当てた……」

「はい」

 執念とは恐ろしいものである。

 間中邦彦の容貌からは、そういったものを余り感じさせない。

 外見を見る限り、ごく普通の青年である。

 写真よりも、実物の方が数段男前で、スタイルも良い。

 ストーカー行為を働く男というと、どうしてもオタクっぽいイメージを想像しがちだが、そんなイメージは無い。

 逮捕して間もない時は、何日も風呂に入っていなかったり、ネット難民のような生活をしていた疲れからか、幽霊のように生気の無い顔をしていた。

 それが、連日ぐっすりと睡眠が取れ、風呂にも入ったからか、顔色も良くなった。

 気の弱そうな雰囲気はあるが、そこそこ女性に好かれそうに見える。

 ましてや殺人事件を犯しそうなタイプには、まるで見えない。

「光が丘に彼女が引っ越したと知ったのはいつ頃だ?」

「去年の春、四月……じゃない、五月だっ、そう五月です」

「それで、次に彼女と接したのは何時だった?」

「……」

「おい、どうした?ここまで話したんだ。きちんと最後迄話してくれ」

 何度も本間が話すよう急かすのだが、此処からの話しになると、間中は黙りこくってしまうのだ。

 そんな日が何日か続いた。

 本間は、事件の核心部分になったが為のだんまりだと思っていた。

 いよいよ長期戦かと覚悟した。

 この時、間中の心中は少しずつ変化をしていた。そして、その変化が突然、面に出て来た。

 何時ものように、取調べを始めようとした本間の前で、間中は急に泣き出したのだ。






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