自白……供述調書
 その日から三日三晩というもの、間中は一切の食事も摂らず、ひたすら留置室で泣き続けた。

 その間は取調べにならず、本間は間中の状態が落ち着くのを待つしかなかった。

 何度か間中の様子を見に留置室へ足を運んだが、その度に間中の啜り泣く姿を目にし、締め付けられるような泣き声を耳にした。

 その姿を見た本間は、人間というものは、こんなにも泣き続けられるものなのかと思った。

 同情では無いが、一瞬、間中邦彦への感情が、犯人に対するそれとは明らかに違うものになりかけた。

 罪を憎んで人を憎まず……

 使い古された言葉が本間の頭を過ぎりはしたが、だがそれらの感情もほんの一瞬の事でしかなかった。

 本間の身体を突き動かしているものは、事件現場で見た被害者の変わり果てた姿であり、突然の悲しみに襲われた家族の慟哭であった。

 そして、それ以上に執念とも思える行動を取らせたものは、理不尽な警察上層部への怒りであった。

 阿久根の事で逮捕直後こそ、間中への感情が暴発寸前迄高まってはいたが、こうして泣き続ける姿を見ているうちに、複雑な思いへと変わって来た。

 三日の間、留置室から一歩も出ずにいた間中が、自ら話しがあると言って来た。

 留置担当からの連絡を受けた本間は、一気に緊張し、取調室に連行させるべく、留置場へと向かった。






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