自白……供述調書
 したたかに酔った。

 『椿屋』を三人で出た後、二軒目迄はしごしたのは覚えている。

 目を開けたいが、飲み過ぎで頭痛がするのと、まだ眠り足りない気持ちから、それが出来ない。

 酔い潰れて遅刻するのだけはまずい。

 そう思って何とか起きようとした森山は、何時もと少しばかり様子が違う事に漸く気が付いた。

 部屋の造りが違う。

 第一自分に掛けられてる布団が違う。

「……!?」

「起きたみたいね。シャワー浴びる?」

「野間口さん!?」

 キッチンカウンターから野間口妙子が顔を覗かせた。

 フライパンを煽る音がする。

「何?やだ、そんなびっくりした目で見ないでよ。心配しないで。君とは寝てないから」

 少しずつ意識が戻る毎に、頭痛が酷くなる。

 居間のテーブルにはビールの空き缶やワインの飲みかけがあった。

「此処、野間口さんの?」

「君、大変だったんだからね。高橋さんはとっとと私達を置いてどっか行っちゃうし、君は君で絡むし」

「僕が…野間口さんに?」

「覚えてないとは随分と幸せね。それよか、シャワー浴びちゃってくれない?
ものすごく酒臭いから」

「ああ、はい……」

「タオルは適当に使って。下着とワイシャツ、コンビニで買って来てあるから。着てたやつはちゃんと持って帰るのよ。さすがに洗濯までは面倒見れないから」

 キッチンカウンターの横を通り、玄関の横の風呂場に入る。

 広めのワンルームといった感じだが、やり手女性弁護士の部屋にしては以外と質素だ。

 それでも自分の住んでいるアパートに比べれば、かなり差がある。

 熱いシャワーを浴びたが、余りしゃきっとはしない。

 5分程で出ると、テーブルが綺麗に片付けられ、珈琲とスクランブルエッグが出ていた。

「随分早いのね。珈琲で構わないでしょ。トーストは?」

「いや、大丈夫です……」

「夕べのトラが朝にはネコに逆戻りだね」

 野間口妙子の軽口に付き合える程には、まだ森山の脳は活動しようとしてなかった。





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