自白……供述調書
 何を自分はすべきか。

 森山は、答えらしい答えを出せないでいたが、取り敢えずもう一度最初から木山の事を調べ直す事にした。

 浅野が警察の取調べ方法に問題があった点を争点にすると言っている以上、自分は違う視点から見る必要があると判断したのだ。

 森山は、木山の過去の犯罪記録と、裁判記録の全てを徹底的に調べた。

 気の遠くなる作業だったし、時間が幾らあっても足りなかった。

 前も散々調べはしたが、こうして改めて見てみると、結構見落としていた事に気付く。

 それらは瑣末的な事であったから、特に問題は無いと思えた。しかし、更に見直してみると、そうでは無いように感じ始めて来た。

 それは、ある書類の中にあった一文を見付けた時であった。

 僅か数行の報告書。

 過去に犯した事件の調書と照らし合わせる。公判記録とも。

 何かが見えて来そうなのだが、それがはっきりとしない。

 その報告書を調べてみる事にした森山は、浅野に所用があるので明日一日休ませてくれと頼んだ。

 浅野は、何も言わず許可し、経理担当の羽村を呼んだ。

「彼には何も言わなくて良いから、明日の休みは出勤扱いにしておいてくれ」

「有休がありますが?」

「いや、出勤扱いで構わない。この事は別に彼に話す必要は無い。それと、調査費用の仮払金を出して上げてくれ」

「判りました」

 浅野の考えている事を理解したのか、羽村はそれ以上は深く詮索しなかった。






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