自白……供述調書
 翌日、森山は茨城県にある刑務所に向かっていた。

 県庁所在地である水戸市の中心から、車で30分ばかり離れた所に目指す刑務所がある。

 木山悟は今から二十五年以上前にこの刑務所で服役していた。

 森山が見付けた報告書は、此処で書かれた物であった。

 法務局矯正課に問い合わせたところ、その報告書を書いた職員がまだ同じ刑務所に勤務している事が判ったのだ。

 吉田春雄。

 当時の分類課職員。

 現在は、同刑務所の厚生課職員として勤務している。

 刑務官としては、一貫して事務畑を勤めていた。

 刑務官の職籍としては、下から数えて四番目。

 一般職としては、特に出世してる訳でもないが、間違いもせず無難な勤務を続けて来た人間である事が、その経歴から窺える。

 前以て面会の件を伝えていたので、指定された時間に行ってみると、所内ではなく、自宅である官舎で会うという。

 刑務所に隣接された職員官舎は、まるで公営の団地のように規則正しく建ち並んでいた。

 建物の側面に番号がある所まで同じだ。

 森山は、母方の祖父母が住んでいる都営住宅を思い出した。

 吉田の官舎に行くと、本人自ら森山を玄関迄出迎えた。

 それ程広くはない台所とダイニングを抜け、六畳ばかりの応接間に案内された。

 吉田本人が台所に立ち、お茶を煎れている。

「どうぞ。妻に先立たれ、このように男所帯なものですから何のおもてなしも出来ませんが」

 二言三言、在り来りな世間話しをし、森山は早速来意の目的を告げた。

「はい、その件のお話しを所内でするには、些か差し障りがありましたので、急遽有休を取った次第なんです。一応、我々刑務官にも守秘義務はありますから。ですから、その辺りを斟酌して頂いて……」

「承知しております。伺ったお話しは、絶対に他言致しません」

「お尋ねの件ですが……」

 それから昼過ぎ迄、森山は吉田の話しの詳細をメモにした。





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