自白……供述調書
 何故、悪法なのか……

 この法によって警察の留置室に止められたままでいれば、警察は何時でも自由に被告や被疑者達を取調べる事が出来る。

 本件の真犯人と目星を付けた容疑者を取るに足らない微罪で逮捕拘留する。

 別件で起訴をし、ゆっくりと本件捜査をするのが、警察の考え方だ。

 起訴後の拘留期間は、裁判が結審し刑が確定する迄続く。起訴後は30日毎に拘留延長が自動的に更新される。

 つまり、一度何らかの罪で起訴されてしまえば、半永久的に留置室に置かれたままになるのである。日本の司法は、戦前から容疑者の自白を偏重する傾向が強い。

 容疑者の自供を元に物的証拠を固める。

 これがどういう事になるか……

 物的証拠を自供に合わせるべく辻妻を合わせるようになるのである。

 いや、物的証拠に容疑者の自供を合わせる事迄する。

 私が強盗殺人犯の容疑者にされると、こぞってマスコミが犯人逮捕の報を世間に流した。

 新聞やテレビに映し出される私の写真は、これ迄の逮捕時に撮られた警察での写真だったから、当然の如く凶悪そうな顔になっている。ひょっとしたら、わざと一番殺人犯らしく見える写真を載せたのかも知れない。

 弁護人の選任通知が届いたのは、強盗殺人に関しての検察側の調べが始まって間も無くしてからであった。

 その時の事を私は妙にはっきりと覚えている。

 強盗殺人の容疑者になってからの私に対する環境はがらりと一変した。

 先ず留置室が移され一人となった。

 他の者達との接触を極端に避けるようにされ、検察庁へ行く際も単独にされた。留置担当係りも以前とは接し方が変わった。

 明らかに見る目が変わり、私に向ける視線に極端な警戒の色を見せ始めたのである。多分、自殺の警戒が一番であったのだろう。

 事実、私は一度自殺を考えた事があったが、但しそれは警察の留置室では無く、拘置所の独居房の中でであったが。


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