自白……供述調書
 森山が持って来た木山の告白文書を読み終えた浅野は、これを裁判の方向性とすべきかも知れないと考えた。

 告白文書の信憑性などどうでも良い。

 寧ろ嘘の方が、心神耗弱等で精神鑑定に掛け易い。

 逆に真実ならば、ストレートに無罪を勝ち取れる。

 どっちに転んでも負けは無い。

「森山君はこの告白文書の中身をどう思う?」

「書いてある内容を簡単には信じ切れません。
 前日からそのマンションの屋上で過ごしていただの、偶然、ドアの開いている部屋に入ってみたら、女性が死んでいたとか、取りようによっては全部作り話しに受け取れます。
 特に不利になるのは、アリバイがあると嘘の供述もしてます。いずれにしましても、本人と面談し、書かれてる事の事実確認をしなければなりません。
 僕の意見としては、こちらのレポートに書いた内容とを考え、精神鑑定に持って行くのが良いかと思います」

「うむ。最後は私と同じ意見だな。早速、木山の告白文書と、君が調べたリポートをコピーし、鑑定留置(精神鑑定)の手続き書に添付してくれ。出来次第、高裁に送るんだ」

「判りました」

 翌日提出された鑑定留置の手続きは、直ぐに認められた。

 一週間後、木山悟の身柄は一時的に精神病院に移された。






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