自白……供述調書
「どうして杉並署が木山を絶対に犯人にしなければならなかったのか。真犯人をパクって貰いたくなかった訳があったからなんだ。
 この川村大輔ってのは、週に四、五日は波多野涼子の部屋に来てたらしい。その辺は、丹羽警部が調べてくれてはっきりしてる」

「チョーさん、さっき、こいつの物的証拠を押さえたって言ってましたが、それはどうやって?」

「DNAに関しては、川村が通う美容室で髪の毛をたんまり採取して調べたんだ。衣類と靴に関してなんだが、どっから出て来たと思う?」

「アクさん、もう何聞いても驚かないから勿体ぶらずに……」

「済まん、済まん。この小野田刑事の所からだ。それも、波多野涼子から頼まれて……」

「その辺の経緯は私から話しましょう。私は本庁の公安部総務課から出向して来ている関係から、署内では報告し難い内容の話しの場合は、直接署長の自宅に伺う事があります。
 ある日、署長がお嬢さんの涼子さんと何事か言い争いをされてまして、その日は長居をしてはまずいと思って直ぐに署へ戻ろうとしたんです。すると、お嬢さんが追い掛けて来るようにして家を出て来られ、私に気付くと、相談があると言って車に乗り込んで来たんです。
 てっきり親子喧嘩の相談だろうと思い、軽い気持ちで返事をすると、思い詰めた表情で、最近、彼の様子が変でと話し始めました。その話しの中で、血の着いた衣類と靴を、彼が洗っているところを見たと言って来まして、何らかの事件に関わっているのではないかと言ったんです。その時に、お嬢さんが事件のあった光が丘のマンションに住んでいたと聞き、その部屋へは彼も毎日のように来ていたと話してくれたんです。
 実は、事件当日以来、一度も彼は部屋に来てません。とにかく、じゃあ彼に判らないよう、その靴と服を持って来て欲しいと私が言いますと、なかなか機会が無かったらしいのですが、漸く手に入れ、それを鑑識に回したんです」

「で、結果はビンゴだった……」






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