自白……供述調書
「ですが、マンションの防犯ビデオには……」

「ああ、写っていない。本間チャン、思い出してくれ、あのマンションに設置されていた防犯カメラは何処にあった?」

「ええと、正面玄関と、エレベーター内っすけど……」

「そうだ。その二カ所だけだ。つまり、各フロアと非常口、非常階段に外階段はまるっきりの死角になっていた」

「その事は、自分も危惧してました。非常口から逃げたとしたら割り出しが難しいなと」

「それが、防犯カメラで間中の姿が撮られていた事で、捜査の意識が全てそこに行ってしまったんだ」

「でも、この物証だけですとまだ川村が真犯人と決め付けるのも……」

「勿論、動機や被害者との関係に関して不明な点が多いが、もう一点、川村が有力な容疑者と断定出来る部分がある。
 不審者の目撃証言があったろ。本間チャンも事情聴取してたから覚えてる筈だが」

「はい。確か、日高……下の名前をちょっと忘れてしまいましたけど、覚えてます」

「目撃した不審者の格好だが、夜とはいえ真夏だ。なのにジャケットのような物で上半身を覆うような格好をしていたと証言している。
 さっき、婚約者の波多野涼子から、川村の衣類が小野田監査官に渡されたと言ったが、その中に波多野涼子のジャケットがあったんだ。事件があってから暫くして、波多野涼子が自分のジャケットが一枚失くなっているのに気付いた。まさか川村が持って行ったとは知らない。
 その彼女が、川村が血の着いたシャツや靴を洗った後に仕舞ったクローゼットを見たら、自分のジャケットがそこにある事に気付いた。それとなくその事を聞いてみたそうだが、帰って来た答えはしどろもどろだったそうだ。
 犯行後、返り血のままでは誰かに見られたら怪しまれてしまう、それで波多野涼子の部屋へ急いで行き、彼女のジャケットを羽織った。しかし、サイズがかなり小さいからボタンまでは出来ず、こうやって手で前を合わせるように押さえたんだろう」

「うぅん、川村大輔か……しかし、幾ら自分の息子を守る為とはいえ警視副総監が……」




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