自白……供述調書
 苦痛にも様々な種類がある事を知った。

 険しい目付きの刑事達から受ける無言の圧力……

 狭い取調室いっぱいに立ち尽くしている彼等から受けるそれは、とても正常な神経で耐えれるものでは無かった。

 何時もなら、取調室の椅子に座らせられる前に手錠が外されるものだが、この時は最後迄そのままにされた。

 朝早くから検事調べで座りっ放しだったから腰や尻が悲鳴を上げる寸前だった。

 少し腰をずらし、足を伸ばそうとしたら、正面に座っていた刑事の足先に私の爪先が軽く触れた。

「てめえ、痛えじゃねえか! おうっ! 刑事に暴行働くたあいい度胸してんな。おいっ、島野っ、お前現認したよな?」

 島野と呼ばれた若い刑事が、

「はいっ、取調べ時の警察官への暴行容疑を現認いたしました」

「公務執行妨害で書類送検の手続きだ」

 理不尽……

 言葉にする前にいきなり襟首を掴まれた。

 同時に天井がぐるりと回った。

 手錠を掛けられたまま椅子からひっくり返されたのだ。

 そこへ私の倍はあろうかという体格の刑事が馬乗りになって来た。

「暴行を働き、更に抵抗の意思を見せてます」

「て、抵抗も何も、く、苦しい……」

「おらっ、おとなしくするんだ!」

 理不尽……

 理不尽……

 理不尽……

 怒りよりも恐怖心しか沸いて来なかった。

 刑事達は決してあからさまな暴力は振って来ない。

 それ以上に、言葉による心理的圧力を巧妙に加えて来る。

 お前は社会のクズだ!

 一生、刑務所暮らししてやがれ!

 コソ泥風情が否認だとぉ!?

 二度とシャバに戻れねえようにしてやる!

 聞くに耐えられ無い罵詈雑言。

 床に転がされれば、

「てめえ、取調室で寝るたあいい根性してんじゃねえかっ!」

 襟首を絞め上げられるかのように掴まれ、息が出来なくなる。

 手錠が何時も以上にきつく締められているから、手首が赤く腫れ上がり、擦り傷が出来た。

 気が付けば、私はぼろぼろに泣きじゃくっていた。





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