自白……供述調書
 拘置所内での全ての動作は、厳格な規則で統制されている。

 その規則や罰則は、ほぼ刑務所と同じだ。ただそれも慣れてしまうと気にならなくなる。

 三度の食事は専属の栄養士が管理し、運動量の少ない収容者には寧ろ過剰な位の栄養を摂取出来る。但し、栄養という部分であって、味というものは保証出来ない。特に、東京拘置所の食事の不味さに関しては、全国の受刑者の間で有名な程だ。

 所持金を多く持っている者や、面会人が来る者は、所内の売店から甘味品等を購入出来たり面会時に差し入れして貰う事が出来る。

 やくざ者などは自分や組の面子、見栄から毎日のように面会差し入れがある。

 金の無い者が雑居に入ると、結構肩身の狭い思いをしなければならなくなる。同房の者達から購入品や差し入れ品のお裾分けがあるが、やはりどうしても貰いっ放しだと気を使うものだ。

 その点、独居なら気楽な事は気楽である。しかし、狭い独居内に四六時中閉じ込められたままでいると、人恋しくなり、些細な事でも他人と会話をしたくなるものだ。

 独居の者は、入浴や運動も基本的に単独になる。

 運動などは、鳥小屋程度の広さの所に入れられ、三十分ばかり太陽の享受を受け、外気に触れる。

 畳三枚も無い狭い部屋に閉じ込められ放しだから、運動不足にどうしてもなりがちだ。

 初めの頃は、大概の者が何もする気が起きず、一日中部屋の中でぼうっとしてるものだが、日にちが経つにつれ、やたらと体を動かすようになる。しまいには定期の運動時間では物足りなくなり、決められた時間外にも腕立てや腹筋をして、刑務官に注意を受けたりする。

 彼との再会も、実はそれがきっかけだった。

 私は、過去にも犯罪歴があるから、拘置所程度の生活には何ら問題無く馴染めていたが、今回ばかりは違った。

 いわれなき罪……

 自分が極悪な殺人者として、この世から抹殺されてしまうかも知れない……

 その恐怖感から、暫くの間、日常の生活が殆んど出来ないでいた。

 独居房に終日閉じ籠ったままの私が目にしたり、言葉を発する相手は刑務官と二人の衛生夫(受刑者)のみであった。


< 25 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop