自白……供述調書
「次の公判で一審の求刑か……。弁護士さんはどう言ってるんだ?」

「どうもこうも、面会に来てくれたのはたった一回切りで、手紙を出しても返事すら来ない……」

「手紙は何回?」

「三回……」

「そうか……。前の担当から簡単に話しは聞いていたが、木山は無罪を主張してるんだな?」

「ええ、冤罪で争うつもりだったのが、弁護士が全然……」

「国選の弁護士先生の中には、精力的に動いてくれる人も居る」

「そう言いますが、こっちに選ぶ権利は全然無いじゃないですか。国が勝手に選ぶ訳だから、金の無い俺達みたいな人間はただ黙ってそれに従うしか無い……。金がある奴は、有能な弁護士を雇い、執行猶予だって無罪だって勝ち取れる。二回目に服役した時、すごいそれを感じたんですよ」

 栗田は私の資料に目をやり、めくっていった。

「……二回目、十五年近く前の話しだな。罪名『恐喝』になっているが?」

「初犯の刑を終えてから、一度は真面目になろうと思って頑張ったんです。二度目との間、七年も開いてるでしょ」

「それが又何故?」

「飲み屋で喧嘩して、示談のもつれから恐喝なんて罪名付けられてしまって……そん時なんてね、付いた弁護士なんかまともに弁護もしなかった。
 警察でも言われましたよ。こんなの執行猶予だって、それよりも、直ぐに弁護士を頼めれば起訴にすらならずに済んだだろうって。国選弁護人の選任て、起訴されてからなんですよね。金があれば、逮捕直後に弁護士を頼める。この間の新聞に出てたけど、東京地検の検事が痴漢で現行犯逮捕されたじゃないですか」

「そういえばそんな事件がニュースでも流れてたな」

「その検事、三日後には保釈で娑婆ですよ。しかも、最後は起訴もされず、処分保留。金があれば無罪だって買えるんだ……」

 正確には無実ではなく、事件として立件されなかったというだけなのだが、逮捕歴は残る。

 それより、私は栗田相手に何故、こんな事を話し出していたのだろうか。

 久しくまともに会話をする機会が無かったからなのか……

 栗田は黙って私の話しを聞いていた。



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