自白……供述調書
五度目の逮捕
 今回は空き巣で現行犯逮捕されてしまった私だが、犯罪を犯したのは初めてでは無い。

 二十歳そこそこの時に、既に刑務所に入っている。

 まともに仕事もせず、引ったくりや何件かの強盗等を繰り返し、ついには郵便局に包丁を持って押し入った。局員が差し出す十万ばかりの金を鷲掴みにしてその場は逃れる事は出来たが、数日して質屋で捕まった。

 路上強盗で巻き上げた腕時計を質入れしに来て、そのまま通報されたのである。

 初犯とはいえ、強盗事件を犯した身だから、執行猶予など貰える訳など無い。

 求刑八年、判決六年。

 身内は幼い頃から無く、施設育ちの私だったから、仮釈の為の身許引受人は公的施設になって貰った。一年半の仮釈期間中は真面目に過ごしていたが、その後は再び悪の道を歩き出していた。

 その後の私の人生は、塀の内と外を行ったり来たりの繰り返しで、気が付いたら五十手前で今回が五度目の逮捕になってしまった。

 これ迄犯して来た犯罪は、強盗に詐欺に窃盗、傷害致傷も一度。なかなかの犯歴だと言わざるを得ない。

 自慢にもなりゃしないが……

 今回が一番情け無い捕まり方だった。

 三ヶ月ばかり前に新潟の刑務所を満期出所したのだが、人生の再出発など望めるものでもなく、ただ徒に時間を過ごしていた。

 刑務所で得た金……

 作業報償金といって、出所後の更正資金に役立てるべく使われるものだが、三年の刑期で得たそれは、僅かに十万と少し。

 住む所も仕事も無ければ、十万足らずの金など十日も保たずに消えてしまう。そうなると後はお決まりのパターン。

 車上荒しに空き巣。

 その日も、何時も通り忍び込めそうな家を物色していた。

 裏庭から入り、勝手口に鍵が掛かっていなかった事から、そのまま家に忍び込んだ。居間を先ず物色していたのだが、金めの物は何も無かった。

 二階に上がろうとし階段に向かった途端、その家の住人と出くわした。何の抵抗もせず、私はその場で取り押さえられ、そして警察に通報された。

 住居侵入と窃盗未遂。

 今回の私の罪名だが、数日後には余罪の分の罪名がこれに加わる。だが、その罪名の中に身に覚えの無い罪が加わるとは思いも寄らなかった。


< 6 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop