自白……供述調書
 私の身体は思った以上に早く回復し、その経過をみて、自傷行為に及んだ件の取調べを受ける事になった。

 刑務所や拘置所では、どんな事情があろうとも、自分の身体を傷付けたり、増して自殺を企てたりする事は許されない。

 数多ある決まり事(遵守事項)の一番目にわざわざ書かれる守るべき事項である。

 私はこれに違反したのだから、当然、処罰を受けなければならない。

 その取調べが始まった。

 格別どうという事は無かった。

 既に、

 諦める

 という気持ちの整理がついていたから、心の中は落ち着いていた。食欲もあるから、以前より体調も良い。

 身柄はまだ病舎のままだが、近いうちには、再び一般舎房に戻されるだろう。

 ただ、季節はまだ冬だったから、置いて貰える事を願っていた。

 寒い日が続く中、空調が効いた病舎は、隙間だらけの旧舎に比べたら、天国と地獄のようなもの。

 取調べは簡単だった。

 職員も気を使って、余り長い時間にならないようにしてくれた。

 一時間ばかりの取調べを二度済ませ、後は罰を言い渡さられるだけ。

 それも、結審が控えていたから、先延ばしにされていた。

 延期されていた判決日も決まったある日、予想外の面会があった。

 弁護士が面会に来たのだ。

 今更……

 との思いが、そのまま顔色に出ていたのだろう。

 面会室での私は、ずっとそっぽを向き、不機嫌な態度を取っていた。

「木山さん、私の責務は結審の日迄という事ですが、一応、求刑が死刑という事もあり、ご自身が無罪を主張されている事から、当然控訴をされるお積りだと思います。予め、その意思を事前に確認させて頂ければ、判決の言い渡しが終わって直ぐに控訴手続きを致します。控訴を前提で構いませんね?」

「控訴するかどうかは、判決の後にでも……。
 もう少し、整理してから考えます」

 意外な私の言葉に、弁護士は肩透かしを喰らって拍子抜けしたようだ。

 判決間際になってから仕事らしい仕事をしようなんて……

 面会を終えた後、私は何故か怒りを憶えた。



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