自白……供述調書
 夕食後の点検に立ち会う為にやって来た夜勤者が、

「木山、明日にも病舎から戻って来るようですね」

 と言って来た。

 栗田は、まだ正式にその報告を受けていない。

「何時決まった?」

「午後の会議で決定したみたいです。病舎の佐藤さんが統括に呼ばれて、明日退病だって言われたみたいですよ」

 近々戻す話しは耳にしていた。

 決定したとなると、やらなければならない事が出て来る。

 栗田は、雑務をさせている受刑者を呼んだ。

「25房の掃除とか大丈夫か?」

「はい、この前、営繕係に来て貰って畳交換も済んでます」

「そうか、明日から多分使用するようになるから、備品とかの確認をきちんとしといてくれ」

「判りました」

 25房は担当台の真横の舎房である。

 天井に監視カメラが埋め込まれ、要監視収容者専用舎房として使われている。

 それ迄入っていた収容者が執行房(刑が確定した者が収容される舎房)へ移ったので丁度よかった。

 木山を収容するならそこしか無い。今度は絶対にあのような事を起こさせてはならない。多分、控訴するであろうから、自分が舎房担当をする間は、間違い無く木山と付き合わなければならない。

 自殺未遂をしたのは病舎に移ってからだったが、入病のきっかけは拒食行為からだった。

 もっと監視をきちんとやっていれば……

 そういう思いが強い。

 又、幹部連中もそう思っているようで、暗に栗田を責めていた。

「部長、そろそろ点検の時間です」

「おぅ、そうだな。行くか……」

 てんけ~ん、よお~い!

 廊下いっぱいに若い職員の号令が響いた。

 栗田は、収容者の写真が舎房毎に収められた点検簿を手にした。




< 90 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop