自白……供述調書
 判決から二日後、私は病舎から旧舎に戻された。

 自分の希望では、もう少し病舎に置かせて貰えたらと思っていたが致し方ない。

 舎房が変えられていた。

 担当台横のカメラ付き舎房。

 いよいよ俺も重要人物扱いか……

 などと思える程、気持ち的には以前より随分と楽になっていた。

 担当は代わっていない。

 ひょっとしたら、私が起こした自殺未遂騒ぎの責任を取らされてるのでは?と思っていた。

 自殺未遂の後遺症で、幾分不自由になった左手を摩った。

 左手だけ、やたらと冷えるのである。肩も余り回らなくなり、歩く時にバランスが取りずらい。ロボットみたいにぎこちない歩き方になってしまった。

 私の新しい舎房は、25房。

 同じ舎房棟なのに、部屋の雰囲気は全然違う。

 ペンキが新しく塗り替えられてあった。食器孔も、中からは開けられない。監視孔は大きく、常時開けられている。

 開けられていると言っても、小さな空気孔みたいな穴が無数に開いているという造りだから、ある程度近付かないと見えない。中からだと、人影に気付く程度だ。シーツも特別誂えだ。切り裂いて紐状にされない為に、敷布団毎そっくり包む袋になっている。

 枕カバーとか、衿布は無い。ミシンでしっかり縫い付けてある。

 私は、何だか可笑しくなった。

 自殺したがっていた時は、そこ迄警戒されていなかったのに、そんな気持ちなど消えた今になって、厳重に警戒されている。

 皮肉なもんだな……

 相変わらず陽の入らぬ部屋で、左手に息を吹き掛けながら、そんな事を思っていた。






< 91 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop