自白……供述調書
 二度目にその弁護士が面会に訪れた時、中年の女性と二人でやって来た。女性は支援団体の代表だと言った。

 死刑制度廃止運動とかもやってるらしい。

 白髪で灰色がかった髪には、まるで脂っ気が無く、化粧も殆どしていない。

 自分から、私と同い年と言っていたが、見た感じはもう少し上に見える。女性らしい雰囲気がまるで感じられず、何だかぎすぎすしていた。

 一緒にこの裁判を戦いましょう、などと熱弁を振るっていたが、私はその姿を見て、新興宗教の熱狂な信者と印象が重なった。

 若い弁護士の方も、戦える材料は充分にありますと言って、盛んに控訴手続きを迫った。

 二人に話させるだけ話させてから、私は一言こう言った。

「何十年も掛かるかも知れない裁判をするより、懲役に行った方が楽だ……」

 二人は黙ってしまった。

「差し入れとか感謝してます。じゃあこれで……」

 と最後に言って私は自ら席を立った。

 背中越しに私の名前を呼ぶ声がしたが、私はそのまま面会室の外に居る連行係に終わった事を伝えた。

 そして、舎房に戻った私は、担当に上訴権放棄の手続きを申請したのだ。





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