喫茶人形 〜メイドの恋〜
「…あれ」
アサノさま いないの…?
「旦那さまは
真夜中、お戻りになりましたが
すぐにお出かけになりました」
…気がつかなかった
「それと、これをお預かりしましたよ」
朝食の並んだテーブルに置かれたのは
キレイにラッピングされた小箱
開けてみると ――――
「ぅあ…ケータイ!!」
「ようございましたね」
「は… はぃッ!!嬉しいです…!!」
どうしよう
どうしよう 嬉しい…!
アサノさまにお礼いいたい…
でも私、アサノさまの番号…
プルルルル♪
「!!
――― アサノさまッ!!
ありがとうございます!」
…ケータイの向こうで
低いクスクス笑い
『…おはよう ユキナ
よく俺だってわかったね』
「えッ?!…だ…だって…
アサノさまが贈ってくださって
これ、新品で…だから」
『ああ…それはそうか
ユキナ
急な仕事で、二、三日戻れない
来たばかりで淋しい思いをさせて済まない
これが終われば
またしばらく落ち着く』
―… だから、ケータイ…
「…はい!
お待ちしております!
お気をつけて
行ってらっしゃいませ!」
『…行って来ます ユキナ』