喫茶人形 〜メイドの恋〜
じゃんけんにも参加せず
一番になった唇ピアスは
私を押さえ付けるのは止め
ソファに一人、ゆっくり座った
「んじゃ、よろしく」
…こんなこと
ここでは当たり前みたいで
フロアからあがって来た
部屋の前を通りかかる人たちは
床にひざまづいている私を見ても
とくに気にせず、歩いて行った
そこへ誰かが走って来る音
「…ちょッ!邪魔してゴメン!
アイツが来てる!俺ヤベーから
ちょい逃げるわ!」
「ど〜した?」
急に背後がザワつく ―――
真っ青になった数人が
慌てて部屋から飛び出して
真下のフロアを見下ろそうと
手すりに怖々、身を乗り出す
「…え、あいつって…あそこの?
…〜ん〜だ〜よ〜ッ!!
ビビらせんなって!てっきりオレ…
…ぅわぁ
んだよも〜ッ!!普通のガキじゃん!」
「バカヤロウ!
あいつ元プロボクサーだっつの!
事故でやめたけどパネェんだって!
俺、次見かけたら
殺るっていわれてんだからさぁ〜
んじゃまたッ!!」
バタバタと階段を降りて行く音
…目の前のベルトを
カチャカチャと外して
ズボンのボタンに手をかけた時
唇ピアスが、突然立ち上がった