喫茶人形 〜メイドの恋〜
声 かけるとか…
そんな雰囲気じゃなくて…
私も頭の中が、混乱してて…
気がついたら
ラクガキだらけのシャッターの前に
ひとりで立ってた…
…声をかけられなかった
一番の理由は…
リョウスケの表情も、眼も…
私の知ってる
ヒマワリみたいな笑顔じゃなくて…
全然知らないリョウスケが
そこで…戦っていたから…
「―――… ユキナ」
低くて 柔らかい声
車のドアが、静かに閉まる
ふりかえる前に
それが誰かは…わかってた
「… アサノ… さま…」
頭の上で
強い夜風にあおられて
激しくこすれあう
黒い電線が、うなっている音