喫茶人形 〜メイドの恋〜



声 かけるとか…
そんな雰囲気じゃなくて…
私も頭の中が、混乱してて…


気がついたら
ラクガキだらけのシャッターの前に
ひとりで立ってた…




…声をかけられなかった
一番の理由は…


リョウスケの表情も、眼も…

私の知ってる
ヒマワリみたいな笑顔じゃなくて…

全然知らないリョウスケが
そこで…戦っていたから…




「―――… ユキナ」



低くて 柔らかい声
車のドアが、静かに閉まる



ふりかえる前に
それが誰かは…わかってた




「… アサノ… さま…」




頭の上で
強い夜風にあおられて

激しくこすれあう
黒い電線が、うなっている音




< 225 / 391 >

この作品をシェア

pagetop