喫茶人形 〜メイドの恋〜



「――― 君はあの日
"とても気分が悪くなって
私と一緒に、家に帰った"

『屋敷』には
そう説明して、そういう事になっている


…今日は俺と
夜のドライブにやって来て
明日は二人で、海に行く ―――

…そういう事に、しないか…?」




優しい、メガネの奥の瞳
前髪を撫でる、キレイな指…


「…アサ…ノさま…」


「随分痩せた
食事は、取ってたか…?」




私はうなずく


ちゃんと、食べてました…


リョウスケが毎日
お弁当、買って来てくれて…


「…そうだ
二人の所に、訪ねるつもりでいたから
ケーキを買って来たんだ

先にひとつ、何か食べなさい」




たくさんの
いろんな種類のケーキが詰まった箱


…それを拡げられた時


私の体は なぜか小刻みに震え出して


大きな声で 泣き始めた ―――…




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